翌日、私は腹痛を訴えて学校を休んだ。

 嘘だった。




 二日目、私は腹痛を訴えて学校を休んだ。

 本当だった。




 三日目、私は腹痛を訴えて学校を休もうとしたけど、

 ダイニングで両親におはようって言った。

 満面の笑みで、もう完全に良くなったって。

 学校に行ったら奈々が嬉しそうな顔して駆け寄ってきた。


 「もう平気ぃ?」





 あどけない顔。

 大きな目。

 黒い瞳がウルウルしてて、凄く可愛い。





 「うん。完全復活~!!」

 「無理しちゃダメだよ?」


 奈々は心配そうな顔をする。





 私がまだ、マスクをしてるから?

 だけどマスクをするようになったのは今に始まったことじゃない。






 「平気平気。もういつも通りだしっ」


 ガッツポーズして見せたら奈々はさっきまでの奈々に戻った。


 「岡崎。おはよう」


 振り返ったら星哉がたっていた。


 「おっおは……おはイタッ」


 ドモる私のお腹に星哉の拳が入る。





 何で~っ!!

 私腹痛で休んでたことになってるんだよ?





 「本気でやったら岡崎は向こうの壁まで吹っ飛ぶ」


 星哉は教室の入り口で、窓の方を指差した。


 「そんなとこまで行かないし。その前に空手の段持ってるでしょ?
 殴ったら犯罪だよ」

 「残念。俺はまだ初段」

 「段、じゃん」

 「拳が凶器になるのは二段以上から」


 クスッと笑って星哉は自分の席に歩いていく。


 「なんか、カッコイイね」


 奈々がポツッとつぶやいた。



 瞬間、ズキッと胸が痛む。




 星哉が好き。

 そんなこと、とっくの昔から知ってたよ。




 だけど、何で?

 奈々が星哉のことカッコイイって言ったら、もの凄く心が痛かった。