中二のとき、会議室で頭を叩かれて、泣きそうになった。

 奈々も、もう一人の女の子も涙をこぼしてた。

 星哉を含めた男子四人は黙ったまま、うつむいている。





 私には涙なんか似合わない。





 マスクしてるし、前髪が垂れてるから、私の表情なんか
 
 誰にも見えてないと思うけど、 涙が落ちたら、それは見える。





 私には涙なんか似合わないんだ。





 「お前ら七人は学校のいいイメージを潰した。みんなに
 迷惑かけたんだぞ。今日の全校集会で前に出て謝れ」


 さらし者だった。

 笑いを許さないシリアスな空気の中で見られるのが一番イヤなのに。


 「岡崎、マスク取れ」


 体育館の舞台袖。

 出て行こうとしたとき、主任は威圧するような目つきで私を見た。


 「はい」


 そう答えるしかない。

 分厚い唇に、乱杭歯。

 見られる。

 全然面識もないような人が私に注目する。

 ギィと軋む、古びた体育館の舞台。

 ピリリとした空気が流れ出ている。




 イヤだ。




 これからどうやって生きていけばいい?

 あの人、スゴイ顔だったよねって五分後には噂になる。

 明日から玄関や廊下ですれ違う度、全然知らない人にクスクス笑われる。

 マスクしてたって、その下にある私の顔、みんなが知っちゃう。

 こんな酷い顔、一度見たら忘れられないよ。


 「岡崎」


 気づくと、私以外の六人はもうみんな舞台の中だった。

 歯を食いしばって、拳を握って。

 顔は自然と上履きを見る。




 出さなきゃ、足を。 

 行かなきゃ前に。




 下唇を噛んで、私は舞台に上がった。