タイミングを計っていたかのようにプシューっと開くドア。

 星哉はスグ反応してスグに降りちゃって、私が出ようとしたら

 電車の奥の方から来た人にぶつかってしまった。


 「すみません」


 スーツ姿のサラリーマンは私を一瞥すると、何も言わないで降りて行く。

 おかげで冷静になれたけど何か空しいなぁ……

 私が電車を降りると背後でドアが閉まる気配。




 最後の下車客だったのかな。




 「先降りちゃってごめん」

 「ううん、大丈夫。のろのろしてた私が悪いし」


 しかもカッコ悪……


 「中学のときさぁ、学校の帰りにハンバーガー食ってたら先生に怒られたよな~」

 「そんなこともあったね」


 忘れたくても忘れられない思い出、以上に中学校時代のことは消したい過去。

 星哉の記憶の中で私は、やぶせったい一重瞼の眼鏡女。

 矯正してるのが恥ずかしくて、そんな顔でマスクまでしてた時期もある。

 おまけに、ちょっとポッチャリしてたよね。


 「ここ来るといつも思い出すんだよなぁ」

 「私も~」


 笑いながら懐かしそうに言う星哉のテンションに私も合わせて笑ってみる。

 唇をギュッと引いて、下唇は口の中に引き込む感じ。

 上唇には力を入れて、精一杯唇を薄くさせる。

 代わりにマスカラとラインで強調した二重の目はあんまり細めない。





 平気だよね?

 もう笑顔、変じゃないよね?




 星哉は私の顔じゃなくて懐かしい街並みを見てることなんか分かってるけど、凄く不安。