戸惑ってる新山より先に出て、車の外から手を差し伸べる。


 「奈々ちゃん」


 ビクッと反応した新山は身体の横に伸びた俺の手の平に、湿った指を乗せた。

 親指でそっと新山の指を押さえると、僅かにお手を引く。

 新山はおずおずと立ち上がり、自然なオレンジの光の中に現れた。

 傾いた太陽が色素の薄い、柔らかそうな髪を長閑に照らす。

 淡くぼやけたように見える新山のボディラインが光の色に染まっていた。

 表情も、あの白い肌も逆光で見えるはずもない。


 「寿様、お手を」

 「あっあぁ……」


 車のドアにかけていた手をどけると、ドライバーが閉めてくれた。


 「行こう」


 取ったまま離さないでいた新山の手を再度引く。

 新山はおぼつかない足取りで一歩を踏み出した。

 いつもどおり、鷹槻はジジイのところで奉仕中。







 今、家ん中はカラだ。