【今日は奈々のところに泊まるね】


 掃除しながら家にメールも出して、奈々には………

 口裏合わせてなんて言ったら、どこにいるのかモロにバレる。

 どうしよう………

 お母さん、奈々に連絡しないかもしれない。

 奈々の家に泊まるのなんて、しょっ中だから。

 私はメールを奈々に出さないことにして、掃除を続けた。

 寿の部屋の掃除まで終わったら、いよいよやることがない。

 暇だなぁと思いながら、クークー寝てる寿の顔を見る。



 帰っても平気かもしれない。



 このまま朝まで眠り続けたら、きっと冷静になってるだろうし。


 「っん……」


 ちょっとだけ顔をしかめ、それから寿は寝返りを打つ。

 ウイスキーの匂いがぷんぷんするし、私より年上みたいだけど、

 全然子どもみたいだ。

 掛け布団に抱きつくように眠ってるし。


 『ただ、奔放とは見せかけで、本当は思慮深く、臆病なのかもしれませんね』


 臆、病……


 鷹槻さんはこうなることを全てを見越して、

 私にいろんなことを話していたのかもしれない。

 お寿司屋さんで見せたあの悲愴な表情でさえ、演出だったのかもしれない。

 だけど、もし本当だとしたら…………

 あのとき、ああすれば良かった、なんて後悔するよりも、

 ダマされて笑れた方がいいかな、なんて…………

 そう思うのは綺麗ごと?

 今までのイメージと全然違う寿を見て、動揺してる自分に嘘つくため?

 まぁいっか、そんなこと。

 今はただ、ここにいたいんだから。