毒舌で軟派で、いい加減なのかと思ったら、実はそうでもなくって。

 奈々のことは、ちゃんとしてくれたみたいだし、私のことは…………

 謝ってくれたし、心配して電話もくれたね。

 昨日なんかは、ちょっとビックリするようなこと言ってたし………

 寿の中で私って、どういう存在になってるんだろう。


 「私、寿がよく分かんないです」

 「わたくしも、分かりませんよ」


 至極当然とでも言うように、鷹槻さんはサラリと流してしまった。


 「ただ、奔放とは見せかけで、本当は思慮深く、臆病なのかもしれませんね」


 長い間、寿のそばにいた鷹槻さんにそんなことを言われると、

 彩並寿って人が本当に分かんなくなってくる。

 私が見てきたものは全部、間違いなのかもしれない。


 「何を信じたらいいんですか?」


 疑いだしたらキリがないけど、考えるのに必要な軸さえ見えなくなっちゃった。


 「強いて言うなら、感覚しかありませんね」


 キザなことを言ったとでも思ったのか、鷹槻さんはちょっと苦笑する。

 感覚――――――

 私は、どうしたい?


 「寿のところに、連れて行ってください」


 答えは簡単に口からこぼれ落ちた。


 「承知致しました」


 そう言った鷹槻さんは、何だかとても嬉しそうに見えた。