食事が終わると、いよいよ本題に入ることになる。


 「寿に何があったのか教えてください」


 さっきと同じ問いかけをしてみたら、鷹槻さんの表情が暗く沈んだ。


 「真っ暗な孤独の闇の中に…………わたくしが突き落としてしまいました……」


 ひどく下がった声の調子に鷹槻さんの後悔と自責の念がうかがえる。

 鷹槻さんが寿に何かするなんて、よっぽどのことだ。

 力なく余裕の消えた鷹槻さんに次の問いを出すべきかどうか迷ったけど、

 やっぱり訊いてみることにする。


 「何があったんですか?」

 「どうしてもお力をお借りしたくて岡崎様をここにお連れしたのですが……
 本当に申し訳ありません。わたくしの口からは…………」


 悔しそうに、自分を責めるように鷹槻さんは言葉を吐き出した。


 「私は寿の力になれるんですか?」


 それは、ずっと持っていた疑問。

 昨日した電話でも、寿は何も話してくれなかったし。

 話してくれないことに対しては一応説明を貰ったけど、

 あれは私を遠ざけるためのウソなのかもしれない。


 「何かご不安でも?」


 問いが問いで返される。

 それってつまり、否定か、答えたくないかのどっちかだ。


 「寿が私を必要としてるようには思えないんです」

 「会長の元へお連れした日のこと、覚えていらっしゃいますか?」


 確かあの日、エリシアさんと会って、寿とはゲームを始めたばかりで。


 「はい」


 あとでくれた電話で寿は遊びでいいならつき合ってもいいって言ってた。


 「あのあとでもう一度、寿は女性と会うことになりました。そのとき、
 寿は岡崎様に、どうしても来ていただきたいと申しておりましたよ」

 「それは、お見合いを潰すためですよね?」


 エリシアさんと会った日、電話貰って私はドキドキしてた。

 私が仕返しのために恋愛ゲームをしてること、寿が気づいてるのも分かってたのに。


 「えぇ。しかしながら、寿が岡崎様を信頼しているのは事実です」


 あっさりと認めて、私に動揺さえ感じさせない。

 寿にも鷹槻さんにも、私は利用されてるだけだ。