含みを持ったような言い方に、その理由を問いたかったけど、
表情が分からないから何も言えなかった。
「全て見えているようでいて、全く何も見えていない。透明な窓ガラスでさえも一つのフィルターで、
もしかしたら日ごとに変わる目の前の景色は大きなキャンバスに描かれた
嘘なのかもしれない。それが自分の生きていく世界だ」
何故か、鷹槻さんの言葉はいつもと違って棒読みだった。
「すごい言葉ですね」
「わたくしもそう思います」
見えないけど声のトーンから、微笑んでいるのが分かる。
「誰の言葉ですか?」
「ここからの景色を見て、寿がつづった言葉です」
「こっ寿が?」
あいつ、そんなこと言うような人には全然見えない。
「『王子と乞食』という物語をご存じですか?」
「二人が入れ替わるお話しですよね?」
「えぇ。結末も?」
王子様は自由を、乞食は富を求めて入れ替わるけど、居にくさを感じて、
最後は自分の意志で元に戻るんだ。
「はい」
「主人を褒めそやすわけではありませんが、人には座るべきイスがあるように思います」
鷹槻さん、今日は寿のことばっかだ…………
今日誘われたのは寿が学校に来なかったことと、関係あるんだろうなって、唐突に思った。
「寿に、何かあったんですか?」
私がそう訊いたら鷹槻さんは場所をかえよう言ったから、ビルを出る。
連れて行かれたのは個室のあるお寿司屋さん。
こんなところ、家族でも来たことないよ……
「お好きなものをオーダーしてくださいね」
「はっはい……」
すっかり恐縮する私は金額とかいろいろ気にして選べるはずもなく……
「こちらの大トロと鯛は是非召し上がっていただきたいんですよ。
甘エビもお勧めです」
鷹槻さんが勧めてくれるものを注文させて貰った。
お寿司のネタは新鮮で歯ごたえがあって、甘かったりぷりぷりしてたりで、
どれもこれも美味しかった。
表情が分からないから何も言えなかった。
「全て見えているようでいて、全く何も見えていない。透明な窓ガラスでさえも一つのフィルターで、
もしかしたら日ごとに変わる目の前の景色は大きなキャンバスに描かれた
嘘なのかもしれない。それが自分の生きていく世界だ」
何故か、鷹槻さんの言葉はいつもと違って棒読みだった。
「すごい言葉ですね」
「わたくしもそう思います」
見えないけど声のトーンから、微笑んでいるのが分かる。
「誰の言葉ですか?」
「ここからの景色を見て、寿がつづった言葉です」
「こっ寿が?」
あいつ、そんなこと言うような人には全然見えない。
「『王子と乞食』という物語をご存じですか?」
「二人が入れ替わるお話しですよね?」
「えぇ。結末も?」
王子様は自由を、乞食は富を求めて入れ替わるけど、居にくさを感じて、
最後は自分の意志で元に戻るんだ。
「はい」
「主人を褒めそやすわけではありませんが、人には座るべきイスがあるように思います」
鷹槻さん、今日は寿のことばっかだ…………
今日誘われたのは寿が学校に来なかったことと、関係あるんだろうなって、唐突に思った。
「寿に、何かあったんですか?」
私がそう訊いたら鷹槻さんは場所をかえよう言ったから、ビルを出る。
連れて行かれたのは個室のあるお寿司屋さん。
こんなところ、家族でも来たことないよ……
「お好きなものをオーダーしてくださいね」
「はっはい……」
すっかり恐縮する私は金額とかいろいろ気にして選べるはずもなく……
「こちらの大トロと鯛は是非召し上がっていただきたいんですよ。
甘エビもお勧めです」
鷹槻さんが勧めてくれるものを注文させて貰った。
お寿司のネタは新鮮で歯ごたえがあって、甘かったりぷりぷりしてたりで、
どれもこれも美味しかった。