顔が染まってくの、自分でも分かる。


 「夕陽がとても綺麗な場所を見つけたのですが、お連れしてもよろしいですか?」

 「是非……」


 鷹槻さんが頭の中で何を考えてるのか、ちっとも分からない。

 ギアをかえながらハンドルを回し、道路を撫でるように滑らかに走る車の中、

 鷹槻さんの横顔には何の感情も表れなくて、訪れた沈黙さえ破っていいのかどうか、

 判断できなかった。



 だけど、綺麗な横顔―――――



 じっと鷹槻さんのこと見たことなかったけど、すごい美人だ。

 輪郭は寿と……あ、目もちょっと似てるかも。

 言葉遣いとか喋り方も上品だし、女形とかやらせたら、絶対はまり役だと思う。

 こんな顔に生まれてたら、私の人生、全然違ってたんだろうな……


 「岡崎様……」

 「はいっ!!」


 突然呼ばれて、私より先に心臓の方が反応した。


 「わたくしは長い間、寿の影におりましたので、あまり人に見られるのには慣れておりません」

 「ごっごめんなさい……」


 うわぁ……見てたの気づいてたんだ……

 気づくよね、そりゃぁ。

 あんなにじっと見てたんだもん。

 う~っ、恥ずかしいよぉ。

 車がスーッと停まった。


 「ですが、毎回そのような反応を見せていただけるのでしたら、
 ナルシストを気取るのも、悪くはないですね?」

 うわ~~~~~~

 私、完全に思考停止。


 「寿の気持ちが分かりますよ」

 「どういう意味ですか……」


 無言のままいたら、どんどん鷹槻さんのペースにはまっちゃう気がして、

 回らない頭を強引に回し、ちっちゃな声で質問する。


 「わたくしの口からは何とも申し上げられません」


 鷹槻さんはオレンジの光を斜めに受けながら、落ち着いた綺麗な大人の微笑みを浮かべた。

 車を停めたのは駐車場だったからみたい。

 外に出ると、そこは大きなビルが立ち並ぶ、大都会の中だった。

 エスコートされて水の中にいるみたいなスケルトングリーンのエントランスに入ると、
 私はロビーで待つように言われた。