裏切られた。


 「自分が何したのか分かってんのかっ!!」

 「申し訳ございません」


 口を一文字に結び、顔をしかめ、鷹槻はただただ俺に謝り続ける。

 日本に来てからも来る前も、経営者としての自覚だトップとしての品格だと

 散々言い続けたくせに、自分はこれか?

 しなだれかかる黒髪は女みてぇで、物言う目はいつもの力を失している。

 鋭く冷静な鷹槻を象徴する面長の輪郭が、今はただ細くて、ムカつくほど頼りない。


 「ふざけんな!!」


 俺はもう一発鷹槻に見舞い、そこを離れた。

 鷹槻は腹を押さえながら前に屈み、そのまま静かに膝を折る。


 「申し」

 「失せろ! 一生顔も見たくねぇ!!」


 ツバを吐き捨てるように言うと、俺は自室に入って力いっぱいドアを閉める。

 バタン!!

 音がペントハウス中に響き、心の中を刺しえぐった。

 俺を管理するくせに、テメェは無法地帯の住人かよ!!

 蹴っ飛ばしたイスが倒れ、机の上のペン立てが倒れる。

 噴き出す怒りのごとく放射された中身をつかんで床に叩きつけた。

 ふざけんな!!

 許さねぇ。

 バコン!!

 机を蹴っても足に痛みがない。

 泣いた琴音を慰めたのは、俺にすら触らせたくねぇっつう意味か?

 『代わる』っつったの断ったのは、抱いてたかったからか?

 あれだったら誰が見ても何も思わねぇもんな。

 楽しかったかよ鷹槻。

 俺らの目ぇ欺いて、嗤ってたのか?

 お前の前じゃ俺はいつだってバカでガキで翻弄されてばっかで、

 ピエロみてぇに見えてんだろうな。

 そんなんハナっから分かってんだよ!



 ゴンッ!!


 「ッ……」


 壁を殴った拳が壊れるかと思うほど、痛かった。



 今回は許さねぇ……

 誰が何つったってな。