目も合わず、何も言わず。

 寝たふりしてるときにベッドの中に入ってきたり、

 口にキスしたり、ソファに座ってたとき、後ろから抱きついてきたり…………

 そんなことするくせに、裸はダメなのか?

 意味分かん……じゃねぇ、論点が違う。


 『心貢と私が逆だったら良かったのに……』


 俺にそんなこと言ったのも、


 『私が欲しかったら、強引にでも引き離しなさいよ? 心貢』


 鷹槻を挑発してたのも、


 『そしたら明後日、出てくわ』


 その条件が鷹槻を一日貸すことだった。

 琴音の不可解な行動は、突き詰めようとすればするほど、

 一つのキーワードに集約されていく。

 鷹槻心貢と彩並琴音は“できてる”。

 ヤバイだろ、それは!

 婚約中だろ? こんなトコにいていいのかよ!!

 琴音の婚約したのはうちのカンパニーにとって有益どころか、

 将来を左右するような大手企業の御曹司だ。

 リゾートホテル産業で世界で名を馳せ、ショッピングセンターを

 世界各地で経営している。

 こんなことがバレたら婚約解消どころの話しじゃおさまらない。

 どんだけリスクがあんのか知らない二人じゃねぇ。


 「鷹槻!」


 風呂場のドアが動いた瞬間、俺は奴の名を殴るように呼ぶ。

 ジジイの忠犬?

 誠実?

 とんだ勘違いだな。


 「何考えてんだよ!!」


 胸ぐらつかんで壁に押し当てると、鷹槻心貢は生気のない目で俺を見つめる。


 「申し訳ありません。このことはいずれ」

 「黙れ!」


 拳がいとも簡単に鷹槻の腹にめり込んだ。


 「ッ!!」