掃除なんかサボっちまやぁいいのに。

 ったく真面目だな。

 ロッカーの前で教室掃除の新山奈々を待ってたところ、いつの間にか人だかり。


 「寿くんて毎日学食なんだね」


 掃除の時間に昼メシの話とは時期外れも甚だしい。


 「あぁ」

 「お家に一流のシェフとかいないの~ぉ?」


 こいつの猫撫で声は耳に心地いいけど、上目遣いにはイラッとする。

 計算しすぎなんだよ。

 こういう女ってウゼェけど何か頼んだとき喜んでやってくれるっつう

 ご利益(ゴリヤク……リエキっつう方が正しいかもな)がある。



 ゴマ擦った方が利口。


 「いる」

 「お弁当つくって貰えばいいのにぃ」


 飽きた、なんつったら白眼視か?


 「シェフの暇がなくなるじゃん」

 「優し~っ」


 前の学校の女どもは純粋さに欠けてソッコー飽きたけど、

 ココはいろんなレベルの奴が揃ってて、けっこう遊べる。

 けど、あんまコイツらはタイプじゃねぇ。

 早く掃除終わらせろよ。


 「それで、寿くん帰らないの?」

 「人待ってる」

 「えーっ!!」


 えーってお前ら、俺が毎日誰か連れ帰ってんの知ってるだろ?

 今日は自分って期待したっつーことか?

 だけど連れて帰るのは新山で六人目だ。

 家で何してたかも調べ上げてるくせに。




 男冥利につきる。



 って、連れ帰ったって大したことはやってねぇけど。