なのに美希は行動を起こそうとしない。


 「不器用なこと言ってると損するぞ?」


 だったらもうやめちまえよ、五十嵐なんか。

 忘れられなくたって、ただひたすら想い続けてるだけよりは、遊んだりする方がマシだ。


 「自分を悪く見せようとするのも損だよ」

 「何言ってんのお前」


 とっさに出た返し文句をそのまま言った。


 「分からなきゃいいよ」


 マジで、美希が言ってることが理解できなかった。

 こいつは何考えてんだ?

 何で今日電話してきたんだ?

 そうだ、鷹槻に用があってフロントの番号が分からなくて俺にかけてきたのかもしれない。


 「鷹槻帰ってっけど、繋ぐか?」

 「いっいいよ!」


 ビビってるっつーことは、目的は違うってことだ。


 「お前さぁ……相談できる奴とかいるわけ?」


 でも俺は、強引に同じ思考で喋り続けようとする。


 「相談することなんかないよ」


 それは……マジで……美希は俺のこと…………


 「…………あの」


 やめとけ、俺。


 「お前まだ俺に用あんの?」

 「ない」

 「じゃあな」

 「待って!」

 「何だよ!」


 用ねぇんだろ!?

 もう切らせろ。


 「今日、何かあったんでしょ? 友だちとして話し聞くよ」


 その、ちょっとお節介な口調は少しだけ古い記憶を呼び覚ました。

 車ん中で強引に朝飯食って車酔いしたとき、


 『具合悪いのに無理しない方がいいよ?』


 って、美希は言った。


 「バカかお前は。手札読まれたら俺はゲームに負けるだろ?」


 唯夏のこととか、その前のエリシアのこととか、

 新山と五十嵐のこともあったし、美希にはもう、借りをつくりたくねぇ。


 「ゲーム?」
 
 「美希が俺に告って始めたんだろう?」


 まだ俺らはゲームの最中だろ?


 「今は一時休戦」


 美希テメェ…………

 朝っぱらから具合悪くなった日、スーパーの駐車場の中を、俺は美希と歩くことになった。