「………気持ちワリィんだけど」

 「最低! 人がお礼言ってるのに何それっ!」

 「美希はそういう奴だろ? 礼なんかいらねぇよ」


 やっぱお前はソレだよ、ソレ。

 ちょっと安心して、俺はいつもの調子を取り戻しかけた。


 「寿さぁ……今日テストサボって何してたの?」


 でも美希が崩そうとするから、


 「何? 俺に興味持っちゃった?」


 俺は強引に普段ぽくふるまった。


 「全然。義理に決まってるじゃん」



 ―――――おい、少しはノれよ。



 「あったよ……」


 明るく言ったつもりが、自分でもビックリするくらいローテンションだった。


 「私で良かったら話しとか聞くけど」

 「それも義理?」


 最近いろいろありすぎて、自分の中にはもう、隠しきれないのかもしれない。


 「勿論」

 「だったらいらねぇ」


 ギリギリかもって気づいたら、トークが勝手に進んでて、こんなことを言っちまってた。

 もうどうでもいいけど、美希は俺のことどう思ってんだ?


 「私のこと好きって言ったの、覚えてる?」

 「急にどうした?」


 一瞬心の中を読みすかされた気がした。


 「いいから答えて」


 動揺しまくってるのを必死で隠す俺と裏腹に、美希は全然変わらない口調。

 これは何の効果を狙った質問だよ?


 「覚えてる。お前も俺に言っただろ? それがどうしたんだ」


 言いながら、それは過去の事実で、しかも脚本に書かれてるような

 既成の台詞を自分の声に載せただけだと確認する。


 「だったら、とりあえず、友だちだよね?」


 何だそういうことか、脅かしやがって。

 今度は俺の番だ。


 「そうか? 好き同士だったら恋人だろ?」

 「こっ恋人ぉっ!? つき合ってもないのに!!」


 予想通り美希はテンパってどもってる。

 普段全然そんなところ見せねぇから、ちょっと新鮮で面白い。


 「私はまだ星哉が好きなの。浮気なんかしないもん」


 あのままいったら、新山に盗られる。