美希の返信を読んだら、自分が落ち込んだよな、

 そうとは言い切れないような妙な気分になってるのに気づいた。

 美希はブラフするのが、うまいだけなのかもしれない。

 談話室のドアが開いたとき、まず出てきたのはもちろん夢花で、

 二人は俺の存在を確認するや驚いたような顔をした。


 「何だよ?」

 「帰ったのかと思った」

 「俺はそんな冷たい男かよ」


 夢花に笑って返すとカバンを差し出す。


 「ありがと~」

 今日、保健室登校した梨乃はカバンのヒモを肩にかけ、ニコニコ笑ってた。

 その晴れやかな表情から、結果は簡単に推察できた。


 「ありがとうございました」


 保健の先生にお礼を言って廊下を出ると、俺は一応確認のために二人に問う。


 「遊びはもう終わりでいいよな?」

「うん。ありがとう」


 ありがとう? 

 夢花がさっき見たのの何倍もいい笑顔を俺に向ける。


 「アタシ一生、梨乃のこと大事にすると思う」


 言われた梨乃は、ちょっとはにかんだ。


 「今回のことがなかったら、アタシずっとそんなこと思わなかったと思う」


 雨が降って地が固まったらしい。


 「良かったな」


 もとはといえば二股が原因だから、それが良くなかったと言われればそれまでだ。

 問題を解決したのも夢花と梨乃で俺じゃない。


 『いつ何時も、彩並グループの看板を背負っていらっしゃることを、
 お忘れにならないようにお願いいたします』


 俺は大丈夫なのか?

 ちゃんと、やってけるのか?

 梨乃と夢花の絆が深まって、それは喜ぶべきことだろう。

 しかしリムジンの中、俺と向き合って座る二人の笑顔を見てたら、

 何て言うんだろう―――――

 鷹槻だったら、この問題をどうやって解決したんだ?

 親父だったら、ジジイだったら?

 俺のやり方は間違ってなかったのか?

 これは梨乃と夢花だから良い結果に結びついただけで、

 他の奴らだったら、こうはいかなかったかもしれない。

 俺は梨乃と夢花の性格読んで動いてたのか?