「マジヘコむから、そういう態度とるのやめろよ」


 思わず本音が口から漏れた。


 「そんな演技通用しない」


 無力だな、俺は。


 「だったら俺じゃなくて、鷹槻に話せ」

 「どうして鷹槻さんが出てくるの?」


 今まで淡々と語るだけだった美希がビビるくらい勢いよく台詞を放つ。

 やっぱ鷹槻か……

 よく分かんねぇけど、昔っから鷹槻は俺の周りの連中に信頼されてることが多い。


 「俺じゃ役不足なんだろ? 美希にとっちゃ疫病神みてぇだし……
 俺には鷹槻しか紹介できねぇ」


 美希を見上げて喋ってたら、虚無的思考と喪失感が舞い降りてきた。


 「六時過ぎれば鷹槻いるはずだから、ホテルに電話入れろ。フロントに言っとく」


 鷹槻がいなきゃ、俺は満足に後始末もできねぇのか。


 「余計なお世話」


 理由はよく分からない。


 「俺は面倒見がいいんだよ」


 美希がそう言ってくれたことが、何故か少しだけ、嬉しかった。


 「送ってやるっつっても、お前は歩いて帰るんだろうな」

 「もちろん」


 言い方が僅かに柔らかくなったように感じるのは気のせいか?


 「あとでホテルの番号メールするから、メアド変えんなよ」


 これ以上自分の調子が狂ったら、明日以降、

 美希にどう接すればいいのか分からなくなりそうで、努めて普段ぽく言ってみる。


 「不安だったら早めにどうぞ」


 コイツは俺の心読んでんのか?


 「お~前マジ可愛くねぇ」


 いつも通りに、俺は終われた。

 美希が歩き出したのを見て俺は帰る支度を始め、

 夢花の机の上に置いてあったカバンを持って教室を出る。

 掃除当番だって勝手に机の横にかかってるカバンを

 机上に置いたままになんかしないだろう。

 だから多分、帰る支度はできているんだと思う。

 俺はこのまま保健室へ行って、二人の決着がつくのを待ちながら

 美希にメールを入れた。

 そしたらすぐに返事が返ってきた。


 【ありがとう】


 多分あいつは口じゃこんなこと、言わねぇな。