確かに本気になれないことは最初に言っておくべきことだったが、

 毎日違う女連れ帰ってんの、新山は知らなかったわけじゃないだろう?

 でも自分に非があることは自覚してたから、

 求められれば何度でも説明しようとした。

 現に、談話室で新山と話したし。

 そのあとで、美希がいろいろ言ってくるから誤解があるのかと思って、

 遊び前提で俺は新山とつき合い、別れた。

 新山は俺がどんな男か知った上でつき合おうとしたんじゃなかったのか?

 変わるとでも思ったのか?



 変わんねぇよ、俺は―――――



 俺はずっと、このまんまだ。


 「帰んねぇの?」


 美希はビクッとして顔を上げる。


 「アンタには関係ない」


 俺と分かると驚きを不快に変えて冷たく放った。


 「相変わらず、つれないねぇ」


 せっかく声かけてやってんのに、すぐ目ぇそらすし、コイツは何でこうなんだよ?


 「荒れてんな」

 「そうでもないよ」


 素直じゃねぇな、まったく。

 長期戦になりそうな気がして手近にあったイスを引っ張った。


 「アンタと話すことなんか、ないんだけど」


 本当に可愛げがないから、俺としても引いてばっかじゃいられなくなる。


 「別に? 俺話してぇなんつってないし」


 カバンを持って立ち上がった美希を見て、苦笑が湧いた。

 こりゃ相当キてんだな……

 からかってる場合じゃねぇ。


 「お前がここに座ってた理由、何となく知ってるぞ。五十嵐と廊下ですれ違った」

 「そういうの、いらない」


 こっちを見ようともしない美希から、ひしひしと俺に対する怒りの感情も伝わってくる。

 そりゃそうだよな。

 美希の周りを引っかき回して振り回して、気にはしてたけど、

 ほとんど何もしてやれなかったんだから。

 正直なところ、どうしていいのか分からなかった。


 「美希。お前にはマジ感謝してるよ。悪いとも思ってるし」

 「口説くなら他の子にして。私アンタには興味ないから」


 半端なことしてきた俺が何言ったって、伝わんねぇか。