落ちたままの音調で寿は淡々と喋ってた。

 真剣な話しだから、私にも真剣でって、そういうこと?


 「私のこと好きって言ったの、覚えてる?」


 口からはサラッと出たのに、すごいドキドキし始めた。

 何で?

 やっぱり……その……


 「急にどうした?」

 「いいから答えて」


 私の中に、少なからず寿に対する気持ちがあるから?


 「覚えてる。お前も俺に言っただろ?」


 ふわ~っと顔が高揚して、その昂ぶりが思考にも影響しそうになる。


 「それがどうしたんだ」


 私の変化に気づきもしない寿は、いたって冷静。


 「だったら、とりあえず、友だちだよね?」

 「そうか? 好き同士だったら恋人だろ?」

 「こっ恋人ぉっ!? つき合ってもないのに!!」


 すっかり私をからかうような口調になってる。

 だから寿と会話するの嫌なんだ。


 「私はまだ星哉が好きなの。浮気なんかしないもん」

 「不器用なこと言ってると損するぞ?」


 寿はまるで肩でもポンッと叩くみたいに、本当に軽く言ったけど、説得力がある。

 唯夏さんと何もなければ、寿は一途だったんじゃないのかなって思うから。



 ―――――というより、きっと今も、そうなんだよね。



 「自分を悪く見せようとするのも損だよ」

 「何言ってんのお前」

 「分からなきゃいいよ」


 喋ることがなくなってしまった。

 どうしよう、この沈黙。


 「鷹槻帰ってっけど、繋ぐか?」

 「いっいいよ!」


 またさっきの落ちたトーンで言うから、寿の真意がどこにあるのか本当に分かんなくなる。