「彩並、手が早い」


 星哉が呟いたときやっと私は奈々のことを思い出した。

 振り返ったら奈々は寿に手を握られてるトコ。

 しかも両手で。

 私たち、片手を重ねるのに一週間だよ??

 あの人たち、一分……

 手が、離れた。

 少しして、寿が物凄く爽やかな笑顔をつくる。


 奈々がつくった拳、凄くかたいことが見ていて分かった。

 私の右手の上にあったものが急に消えると、外気が凄く冷たく感じる。


 ガタンッ


 うつむいたまま足早に戻ってくる奈々が誰かのイスに躓いた音で私は完全に我を取り戻した。

 あれ、だけど奈々私たちの方へは来ない。

 キーンコーンカーンコーン


 「HRの後までお預けだな」


 星哉は楽しそうに言って席に戻って行った。

 星哉の腕があった場所がまだ暖かい。

 冷たくなった右手をその場所にそっと置いてみる。

 かたいなぁ、やっぱり。

 机にあの柔らかさはない。

 星哉……

 ホントに私の彼氏なんだぁ……

 思えば長かった。

 小学校中学校、高校も二年間、いろいろあったなぁ。

 私はただひたすら星哉だけを見てたんだけど、星哉はそうじゃなかったよね。

 ずっとつき合っていきたいけど、別れちゃったりするのかなぁ。

 一応、星哉が告白してくれたからつき合うことになったけど、その前に私の気持ち聞かれてるんだよね?

 フリーでいるのがイヤだったからかな。

 それだったら凄く悲しい……

 すぐ別れることになりそう。

 どうしよう……

 星哉はまだ私のこと、好きじゃないかもしれないんだ。

 次第に冷めていく机を見つめながら私は不安になった。