奈々、どう思ってるの?

 私のこと疑ってる?

 さっきから全然私に会話振ってくれないけど……

 奈々はそんな子じゃない、私のこと信じてくれてるはずだよ。


 「明日もテストだし、そろそろ帰らないか?」


 止まらない奈々の台詞の合間を縫って、星哉が言葉を挟む。


 「うん。じゃあねミッキー!」


 えっ?

 って、私は思った……

 だって奈々………

 そりゃあ、私気を遣って一人で帰ったりしてたけど……

 私が近くにいるときは、毎日誘ってくれてたのに。


 「また明日ね」


 この言い方は不自然じゃなかったかな?


 「星哉クン、今日ウチの家で数学一緒にやらない?」


 奈々―――――

 遠くなってく二人の背中を見つめながら、私は取り残されたような気分になる。

 ような、じゃなくて、取り残されたんだ。

 奈々、本当に星哉のこと、好きになっちゃったんだね。

 悲しいなんて言っちゃいけないし、彼女じゃない私には

 もう何の権限もないのに、嫌だって言ってる。

 心が悲鳴を上げそうだ。

 すぐに帰る気にはなれなくて、私は掃除の終わった教室の、自分の席に座った。



 勉強でもしてようかな。

 明日のテストは世界史と、数学……数学……


 教科書出すのが嫌になって、イスに座るとため息ついたまま、途方に暮れてしまった。





 「帰んねぇの?」


 ハッとして顔を上げたら彩並寿が私の前に立っていた。


 「アンタには関係ない」

 「相変わらず、つれないねぇ」


 イタズラっぽく笑う寿が甚だしく憎たらしい。 

 誰のせいでこんなことになってると思ってるの?

 睨んでから視線を机に戻した。


 「荒れてんな」

 「そうでもないよ」


 ガタガタ音が鳴って、何の音か確認したら、それは寿が前の席のイスを引いて座る音だった。


 「アンタと話すことなんか、ないんだけど」