星哉が大きく目を見開いて、私を見つめている。


 「なっ奈々から聞いたの。接戦で凄かったって言ってたよ」

 「そうか……」


 星哉の表情が元の疲れたような顔に戻る。

 良かった、気づかれてないみたい。


 「岡崎その日、予定でもあった?」


 何で星哉……

 どうしてそんな風に、悲しそうに言うの?

 私の目と耳が、おかしいせい?


 「確か買い物に出かけてたよ」


 私のバカ!

 星哉がいつもみたいに柔らかく微笑んだ。


 「変なこと訊いてごめんな」

 「うっうううん。私こそ、行けなくてごめん。約束は守るべきだったね」

 「気にするな。ああいう場合は来ないのが、多分普通」


 星哉が優しいから。


 「ごめん」

 「岡崎に負けるトコ見られなくて良かった」


 私に気を遣わせないようにか、星哉は冗談ぽく笑ってる。


 「工藤くんには勝ったんでしょ?」

 「だけど他の奴には負けた。これじゃ意味ないだろ?」

 「そんなことないよ!」

 「意味、ないんだよ……」

 「二人とも何話してたの~!?」


 そこへ奈々が入ってきた。

 ヤバイ!

 奈々にウソついたら星哉が怪しむ。

 ホントのこと言ったら奈々との関係が……


 「関東大会の話し」


 何も知らない星哉が言っちゃった。

 奈々はチラッと私を見る。

 言ってないよ!!


 「格好良かったよ~! パシッパシッて技が決まるの。
 星哉クンの技はキレが良くって」