寿はテストどうしたんだろう。

 教室に帰って来たかと思ったら、すぐにまた出て行った。

 彼女と一緒にHRもサボって何してるんだろう。

 寿のことを特別意識して見てるわけじゃない。

 だけど思考に隙間があると、星哉と奈々のこと考えちゃうから、

 何か考えてないとと思うと、派手なことやってる寿が目に入るんだ。

 掃除が終わり、帰ろうとしてカバンを肩にかけようとしたら、

 星哉が近づいてくるのが見えた。

 どっどうしたんだろう………


 「テストできた?」

 「あんまり」


 星哉と奈々のことばっかり考えて、勉強に集中できなかったもん。


 「俺も」


 それは、どういうことだろう。

 私のこと考えてくれてたからなんて、あるはずないけど、ちょっと期待しちゃうよ。


 「ウソだぁ、星哉頭いいじゃん」

 「空手やってたから勉強も頑張らなきゃと思ったけど、もうな……」


 星哉は疲れたように笑う。

 星哉が小学生の頃から空手やってるの、私知ってるもん。


 「大学でもやるんでしょ?」


 全国大会をずっと目指してたんだ。


 「どうかな……」

 「何で?」


 意外すぎる答えにビックリした。

 だって大学にはインターカレッジがある。


 「インカレは空手ないの?」

 「あるけど……もういいかなって、さ……」


 投げやりに言った星哉が、何だか寂しそうだ。


 「何でよ~! 工藤くんには勝ったじゃん。いい試合だったよ?」

 「え?」

 「あっ……」


 マズイ!

 これは、言っちゃいけないんだった。