「五十歩百歩っていうことわざあるでしょ?」

 「五十歩も違うのに、夢花はそれを同じと思うのか?」

 「そんなのどっちだって」

 「良くねぇよ。登校拒否らせて、こいつの人生狂ったら、同じこと言えるのか?」

 「だいたい寿くんも悪いんだよ?」

 「そうだな」


 認めてやったらベラベラ夢花は語り出す。

 梨乃はその言葉を、じっとうつむいて聞いていた。


 「梨乃はどう思う?」

 「えっ?」


 まさか自分にふられると思わなかったのか、戸惑ったような顔をして俺を見つめた。


 「夢花に憧れてたんだろ?」

 「えっ?」


 今度戸惑うのは夢花の番。


 「……うん……」


 うなづいて、梨乃はまた黙ってしまった。


 「何であんなことしたのか、自分の口からちゃんと言え」


 背中押してやったのに梨乃は黙ったままだった。


 「梨乃が高校デビューだって知ってたか?」


 言わないなら、代弁してやるしかない。


 「知るわけないじゃん」

 「夢花みてぇになりたいと思って、お前のそばにいたんだよ」

 「そんなの、知らない」


 強気で返す夢花の声に、あきらかな動揺が入り交じる。


 「俺とつき合いたいって言ったのは、多分、夢花がそうしたからだ」


 真似ばかりするなと思ったか?


 「梨乃が急に雰囲気変えたのは、お前に追いつこうとしたからだ」


 ケータイで撮った写真を夢花はその日のうちに、梨乃に見せた。

 あんなの見せられて、梨乃は慌てたんだよな。

 憧れは多分憧れのままだけど、距離が近くなればなるほど

 手が届きそうな気がして、つかみ取りたくなる。



 そして無理して背伸びして―――――