「今日もテスト頑張んなさいよ!?」

 「んなダリィことできるか」

 「ちょっと心貢! この子の教育どうなってるのっ?」


 出て行くと言っていた琴音はまだペントハウスにいて、

 いったいいつ、立ち去る気でいるんだろう。

 いていいと言った手前何も言えないが、あれから過度なことは

 しなくなったから、ストレスはそんなにたまらない。

 ん?

 電話か?

 朝家を出ようとしたら、ケータイがバイブし始めた。


 「今日ね、梨乃休みなんだって」


 電話向こうで夢花の声がそう告げる。

 期末テスト当日に休み、ねぇ。


 「分かった」


 ここ最近、俺の周りにいる奴らの様子がおかしい。

 学校にいる間中、梨乃が近くに来ることがなくなったし、

 弁当を食べるのも一人だということが分かった。

 梨乃の積極性が大幅ダウン。

 要するに、登下校時以外に梨乃との接点がなくなったのだ。

 朝はともかくとして帰るときは俺が呼ばないと梨乃は

 近くに来ないし、車にも乗ろうとしない。




 俺だってバカじゃねぇ。




 夢花との電話を切ってすぐ、梨乃に連絡した。

 コールがやたら長い。




 マジで風邪でも引いて寝込んでるのか?


 「おはよう寿くん」


 声に風邪っぽさを感じないし、喋り方もいたって普通。


 「朝早くから悪いな。お前、今日休み?」

 「え? 行くよ」





 何かが、確実に動き始めている。