「分~ったよ」


 二時間目のあとの休み時間はこんなカンジで潰れた。


 「消しゴム買いにつき合って」

 「んなもんさっき来たとき買っとけよ」


 要領の悪い夢花につき合ったのは四時間目の前の休み時間。


 「今日は頑張ったから、じっくり食べて欲しいの」


 昼休みになると、夢花はそう言って、強引に俺を連れ出した。

 そのせいで二時間目が終わってから昼休みに至るまで、

 俺は梨乃と一言も口をきいてない。


 「どぉどぉ?」


 夢花は弁当のフタを開け、俺の前に突き出した。

 頑張ったというのはどの辺りか、代わり映えのしない弁当を

 見せられても、どう感想を言えばいいのか分からない。

 ともあれ、夢花一人の相手をすればいいわけだから、いつもより楽だ。



 だが、梨乃は今どこにいるんだ?

 友だちと飯食ってんのか?

 あとで、


 「ズルイわたしも~」


 とか言わないよな……

 いつもより平和な昼飯を終えて教室に戻って来たとき、

 俺は異様なものを見つけてしまった。

 梨乃が、一人で机に座り、ケータイをいじっていたのだ。

 俺の勝手なイメージの中では、いつも誰かとつるんでいるのが梨乃だった。

 それが、一人。


 「昼飯食ったか?」


 近寄って行って声かけたら、梨乃は何だか悲しそうな顔をして、俺を見上げる。


 「食べたよ」

 「何で一緒に来なかった?」

 「気ぶ~ん」

 「駆け引きには負けてやらねぇよ」

 「そんなんじゃないもん」


 梨乃はそれだけ言うとケータイ画面に目を戻してしまった。

 朝はこんなじゃなかったはずだ。

 こいつの身に何が起こった?

 俺はしばらく梨乃を観察することにした。