「えあの……うううん」

 「良かった」


 目を細めずに口元で笑む。

 鷹槻がよくやってるやつだ。

 女の視線が逸れる。

 俺はさり気にボディタッチ。

 まずは肩。

 コイツ華奢スギ、却下。


 「ごめんな?」


 俺を見てもいねぇその女に向かい、目も細めて微笑んでやると、

 若干辺りの空気が変わる。

 それが俺の歩き出す合図だった。

 歩調速めて歩きゃあ、あの団体はついて来ない。

 来れないわけじゃなく、来ない。

 女は口から先に生まれて来たような動物だから、

 話題を与えてやれば、そこで止まる。

 教室まで行って机に突っ伏してればそのうちHRが始まるし、それまで俺は自由の身。

 一人暮らし、のハズが家には鷹槻がいるし、学校じゃあコレだし。

 プライベートはねぇのかよ!?


 「おはっおはおは……よ……う? ことぶ……彩並クン」


 教室で机に突っ伏してた俺に声を掛ける女アリ。

 空気を読め!

 教室についたばっかだし、寝たフリとかしてもバレるし、俺は起き上がるしかねぇ。


 「おはよう」

 「あのねっ!! ウチ新山奈々!! よろしくねッ」


 目ぇデカッ、背ぇちっさ!!

 いいカンジじゃね?

 マジなメイドとして雇いてぇ。


 「よろしく」


 左手を差し出すと、新山は顔を真っ赤にして、手をおずおずと差し出した。


 「冷てぇな」

 「えあう……冷え性なの」


 うつむき加減で目は合わさない。

 こいつメイドにしたら、鷹槻とは違ってゼッテェ従順だ。