七月の頭になった。

 そろそろ期末テストの準備を始める頃。


 「寿クン、新しい彼女つくったんだね……」


 昼休みに、奈々がぽつっとつぶやいた。

 それはちょっと、悲しげな顔で。

 総体が終わって、星哉とも普通には喋れるようになって。

 だけど私はあの日、あの場所で約束を果たしたこと、言わなかった。


 「あれから、どうしてるの?」

 「どうしてるって?」


 奈々の問いは唐突で目的語がなくて、分からなかった。


 「寿クンと……」

 「何もないよ」

 「そうなんだ……力になるよ?」

 「大丈夫」


 だって別に、私は寿のこと、好きっていうわけじゃなくて。

 って言ったらちょっと語弊があるけど、まだ星哉のことが好きなわけだし。


 「寿クン、今の彼女のこと遊びだと思うよ?」


 それは何となく分かってる。

 寿が真剣になるのって、多分唯夏さんだけだ。


 「自分の気持ち、言ってみればいいと思うよ。
 寿クンはミッキーのこと好きだから、ちゃんとしてくれると思う」


 私と本気でつき合ってくれるってこと?

 ありえないよ。

 向こうには経営者としての自覚があるみたいだし、私は一般人だし。

 住む世界が全然違うんだ。


 「気持ち伝えるべきだよ」


 奈々は知らないから、私がまだ星哉を好きなこと。

 だからそんなこと言うもん。


 「奈々はどうなの?」

 「ウッウチっ? ウチは………」


 ちょっと困ったような、でも明るい奈々のはにかみ。

 星哉は他のクラスの友だちのところに行っていて、今ここにいない。

 関東大会で星哉は工藤くんに勝ったけど、他の人に負けて、

 だからインターハイには出られない。