「な~ぁにぃ? 聞こえな~いっ!」

 「おやめください琴音様」


 冷徹な声が聞こえ、俺は心の中で小さくため息。


 「私が欲しかったら、強引にでも引き離しなさいよ? 心貢」


 タノム……こいつを早く何とかしてくれ……


 「分かりました。どうぞご勝手になさってください」


 鷹槻テメェふざけんな!


 「わたくしにはお夕食のお支度がございますので」


 お前は俺の執事だろうが!!


 「ありがと~心貢。寿ぃ、どうするぅ?
 久しぶりの姉弟水入らずよ?」

 「ッ!」


 瞬発的に力が入ったせいで喉の奥が鳴る。

 琴音が俺に抱きついたまま跳んだらしい。

 一瞬血管切れるかと思った。

 するりと俺とソファの間に入り込み、琴音が俺の隣りに

 座った瞬間、俺はサッと斜め上に逃げる。

 要するに右足を踏み出しながら立った。


 「あ~、逃げた!」

 「あんたさぁ、婚約してんだろ? わきまえろよ!」


 血ぃつながってるっつったって、俺は男だぞ!

 結婚する気あんのか?

 前より酷くなった気がする。


 「フィアンセに愛想尽かされて終わるぞ」


 言ったら、琴音の顔が曇った。


 げっ、図星かよ……



 「寿がいじめるぅ……心貢~……」


 一瞬でも心配した俺がバカだった。

 琴音はさっきと打って変わって鷹槻の部屋の方に走って行った。



 ウゼェウゼェ。



 日本に来てからイイコトがまるでない。

 どうなってるんだよ、この国は。

 おかしな国なのか?