いろんな人の声が飛んでる。

 身体でリズムをとり、隙を突いて星哉の蹴り!

 試合が一回止まって星哉にポイントが加算される。

 八点先取の短い試合。

 二分もあれば終わっちゃう。

 頑張って……

 試合再開。

 間合いを詰めっあぁっ!!

 工藤くんの二段突き。

 取ったら取られ、取られたら取り返す。

 固唾を飲む私の視界の中でいい試合が続いて…………



 終わる……

 工藤くんが七点、星哉は六点。

 決まる……次で決まる。

 リズム取って、星哉が足を―――



 「頑張って~ぇっ!!」



 その声にハッとしてそっちを見ると、私の近くに奈々がいた。

 来てたんだ。


 「キャ~ッ!!」


 奈々が飛び上がって喜んだから、私は試合に目を戻す。

 お辞儀して、戻るところだった。

 一番肝心なところを、私は見られなかった。


 「ミッキー! 勝ったよ勝ったぁっ!! 星哉クン勝ったよ!!」


 ジャンプして私の手を取る奈々。

 自分のことみたいに喜んで……


 「インハイ出られるかもっ! 星哉クンの念願叶うよ~っ!!」


 嬉しかったよ、勿論。

 だけど、何で?

 嬉しいっていう感情が、湧いてこない。

 奈々はまるで私たちの間に何もなかったかのように、

 明るく元気に喋ってる。


 「あの、奈々」

 「ん?」

 「怒って、ないの?」

 「……ミッキー、ごめんね」


 奈々は唐突に謝った。


 「ウチね、ミッキーに言わなきゃイケナイことある。ちょっと来て?」


 不安そうな表情で奈々は言う。


 「うん。私も話したいことあったんだ」


 奈々に、謝らなくちゃいけない。

 私たちは階段を下り、武道館の外に出た。