明日、空手部のインターハイ予選だ。

 星哉が懸けてた関東大会。

 これに負けたら引退だって、ずっと言ってて。


 『県は必ず通過する。だから暇があったら関東大会、
 見に来いよ。今度は絶対、工藤に勝つから』


 滅多にそんなこと、言わないのに。



 行っても、いいのかな―――――



 奈々とは挨拶するようになったけど…………

 星哉とはあれから口もきいてない。

 お互い意識して、避けてるような感じ。


 元通りには、戻れないよね………

 それでも私は、試合を見たいと思った。

 例え星哉が気づいてくれなくても、反故にしたと思ってても、

 関東大会を見に行くのは、私と星哉の、最後の約束だから。

 裏切って、約束まで破るなんて、したくない。

 だから、試合を見させてください。

 私は翌日、関東大会が行われる会場に行った。

 顧問の先生には場所と時間を聞いたけど、

 詳しいプログラムとか教えて貰うなんてできなかった。

 もしかしたら、先生が星哉に言っちゃうかもしれないから。

 それは、困る。


 試合、いつだろう……


 いつ、工藤くんと当たるんだろう。

 放送で、私の学校の名前が呼ばれた。



 そしてそのあと、星哉の名前が―――――

 相手は……くっ工藤くんっ!?



 一試合目からなんて…………

 星哉大丈夫かな。

 もしかしたら、これが高校生活の中の、最後の試合になる。

 大学で空手やるつもりがないなら、星哉の空手人生、最後の試合だ。

 アリーナ席から見下ろす空手の試合。



 身にまとった白い衣を帯で締めて、二人が対峙する。

 片手で全て隠れてしまいそうなほど遠い場所に、

 遠い世界にあるはずの希薄が、私の肌を撫でた。



 総体は寸止めの空手だから、蹴りが何点、

 突きが何点、とかいう感じで決まってく。

 八点先取で勝ち。

 頑張れ……星哉!