「はっ?」

 「だからぁ、ここで暮らすの。よろしくね。寿楽クン」

 「出てけ」

 「ダメよぉ。おじい様からも、お許しいただいてるし」


 夜もおちおち寝てらんねぇし、こんな奴と同居したら、

 どうなるか分かったもんじゃねぇ。


 「ジジイが許しても、俺が許さねぇ」

 「こんな時間に乙女を追い出すの?」

 「まだ六時半だよ。テメェのドコが乙女だ」


 ♪インターホン♪


 鷹槻はインターホンを聞きつけて、部屋を足早に立ち去った。


 「ひとりぢゃサミシイの……お・ね・が・い」


 拙い言葉+上目遣い×お祈りポーズ=図々しいんだよ!


 「却下」

 「あ~いい匂い。お腹空いた~ぁ」


 リビング続きのダイニングで食事の支度が始められてるのが音と香りで分かる。

 が、人の話しを無視していいことにはならない。


 「聞けよ」

 「甘い言葉でも囁いてくれたら、一字一句聞き逃さないわよぉ?」


 ドアのところまで来た琴音は、トロンとした目で俺を見上げる。

 バックリ胸の開いたタイトなTシャツは、

 どうしても俺の視線を誘うが、どうせシリコンだ。

 そしてこいつは血のつながった自分の姉。

 
 「そぉんな怖い目で見ないでよぉ」


 姉は挑発気味に俺を見た。

 長い睫毛がくるりと上を向き、俺の背後からいい具合に

 明かりをとりながら瞳を輝かせている。


 「だったら、目ぇ閉じれば?」

 「期待させて何もなかったら、ショックじゃない」