生暖かい息が顔全体にしなだれかかる。

 沈んでいく右肩の近くのマットレス。

 ヤベェ! ヤバすぎる!

 ガッと目ぇ開いた瞬間、


 「ウッウーンッ」


 どこからか咳払いが。


 「あらぁ、心貢そこにいたのぉ?」


 相当なシーンを見られたのに、あっけらかんと喋る琴音。


 「お部屋はあちらですよ?」


 サンキュー鷹槻……

 俺はホッと一息吐いてまた寝たふりを始めた。


 「いいじゃないの。久しぶりなんだから、
 挨拶よ、挨拶。キスしたら行くから待ってて」


 「ふざけんな!」

 「琴音様っ!」


 間髪入れずに俺と鷹槻が叫ぶ。


 「わ!! びっくりしたぁ。寿起きてたのぉ? 人が悪いわね」


 琴音はムッとしたような顔をして俺を睨む。

 人が悪いってどっちだよ!


 「起こされたんだよ! 出てけエロ女」

 「ひどいっ。遥々イギリスからイタリア経由で帰ってきたっていうのに」


 イタリアって何だイタリアって。


 「受け取りなさい、イタリア土産よ?」


 と言うと、琴音は突然俺の胸ぐらをひっつかみ、ギュッと引っ張った。




 ぶちゅ~~~~~~~っ



 このバカ!!

 俺は思いっ切り琴音を押し飛ばす。


 「おわ!」


 ぼよ~んとベッドで揺れる琴音の身体、の一部の胸。

 どうせシリコンだろ?

 二度とこんなことが起こらないようにシメとこうと

 思って、俺は琴音を見下ろそうと身体を前に伸ばす。


 「おやめください寿様」


 琴音の肩上に着こうとした右手を鷹槻に取られた。

 険悪な顔をして、俺を刺すように見ている。

 何度も何度も俺の頬を叩いた、あの顔だ。


 「やんのか?」


 調子乗りすぎなんだよ、執事の分際で。


 「寿様に、そのつもりがおありでしたら」

 「上等じゃねぇか!」