「お前らさぁ、何で砂糖入れるワケ?」

 「え? だって……卵焼きだから」

 「入れたっていいんだけどさぁ、俺に食わすときは、抜いてくれ」


 アタシも、と言い出した夢花が、寂しそうな顔をしてる。


 「火加減最高。食感もいい。だから、甘さな」


 試食会をやってたら美希が教室に戻ってきた。

 一週間前に五十嵐と別れた美希は俺のせいで孤立してる。

 新山奈々と五十嵐星哉の目があるから声をかけるわけにもいかず、ほっとくしかない。

 しかし昼休みは可哀想だ。

 一人で教室出てって、今みてぇに一人で早々に戻ってくる。

 他のクラスの友だちと食ってる感もない。


 「寿くんどこ行くの?」

 「トイレ」


 そう言や流石に誰もついて来ねぇから、ウソぶっこいて俺は階段の踊り場に行った。

 上下フロアから騒音が響いてはくるが、割と静かだ。


 「お前さぁ、友だちいねぇの?」


 美希がケータイに出た途端、俺は言った。


 「いっいるに決まってるじゃん!」


 いつも通り、強気の美希。


 「じゃ何で一日中、一人なわけ?」

 「私の勝手でしょ」

 「仲間に入れてやろ~か?」

 「けっこうです。私はあんたと距離置きたくてたまんないの」


 可愛くねぇ。


 「へーぇ、知らなかった。てっきり近づきてぇのかと思ってたよ」

 「誰が!」

 「俺が呼べば来てくれんじゃん?」

 「そっそれは……成り行き!!」


 思わず苦笑が漏れる。

 苦しい反論だな、それは。

 このまま遊んでても良かったが、いっこうに話しが進まないのでやめにした。


 「今日、部屋に来いよ」

 「嫌だ」


 俺の言葉をかき消さんばかりにバシッと断った。

 可愛げのねぇ女だ。