私がまだ星哉のこと、大好きだって分かったから。

 だからそんなこと言ってくれたんでしょ?

 ちゃんと、分かってるよ……

 でも……だけど…………星哉…………


 私が告白する前から、好きだったって…………


 あれは、ホント?


 見抜いてたのかな、星哉は。

 私の心の中に、ほんのちょっとだけだけど、寿がいるっていうことを。

 もしかしたら、それはムクムク膨らんで星哉への気持ちと

 同じくらい大きくなるかもしれない可能性があるってことも。


 「よりが戻っても……きっと…………しこりは……
 残ります…………私……これ以上、星哉に…………」


 怖いよ。

 いつもいつも笑って力になってくれたのに。

 どんなときも、守ってくれたのに。


 「嫌われたく……ないんです」


 喉に力が入って、声が出にくくなって、精一杯嗚咽を我慢しながら、私は言った。


 「失礼しても、よろしいですか?」


 鷹槻さんが吐く息の多い湿った声で、静かに紡ぐ。


 何を?


 分からなくて、私はうつむいたまま、身体の横で、両手の拳を握ってた。



 「今日は寿の執事として来たわけじゃない」



 男性特有の響きを持った低い、音。

 そっと包み込むようでいて、でもその感覚は確かで、温かくて。

 大きくて、優しくて。


 「気にしないで泣け。涙がかれるまで」


 あまりに静かで起伏のない口調が、いつもと全然違くって。

 抑えこもうとしてた全てが一気に勢力を持って、

 ぐわ~っと湧き上がってきた。