「俺な……けっこう前から岡崎のこと、好きだったよ。
 だから後悔だけはしたくない」





 硬派な星哉の言葉が、キリキリと胸に響いた。

 星哉は優しいんだ。

 言い訳なんかするなって、怒鳴りたいだろうけど、それを言わない。





 私のことが好きだから、だから聞きたくないんだって、言ってくれた。

 つき合ってたときのこととか、その前のこととか、

 全部綺麗な思い出にしたいからって、そう言ってくれた。







 「言い訳はしないでくれ」


 星哉は何かを置くように、静かにゆっくり言った。





 誠実で、優しくて硬派で、そんな星哉が私は好きなんだ。

 これ以上食い下がったらまず、星哉は優しくなくなるね。

 そして、そこからいろんなものが崩れちゃう。




 私がいけないんだもん。



 星哉がいるのに、心の中に寿が入ってきて、たまに心臓をおかしくさせる。

 背中を追いかけてたときみたいに、一途じゃなかったから。

 誠実じゃない私は、誠実な星哉には似合わない。


 「ごめんね」


 止めるなら、今だけど。

 すがりつくなら、今しかないけど。

 私は星哉の腕を放した。







 十年想って、一ヶ月。






 この先きっと、もう見込みはないね。

 でも私はずっと、





 星哉のことが好き―――――





 誰よりも、










 一番。