「勝手に部屋入ってきて何言ってんだ? テメェぶっ殺すぞ」

 「やれるもんならやってみろ!!」

 「やってやるよ!!」


 目をそらしもしないで俺を見るあの女の顔。

 マジぶっ殺す!


 死ね!!


 ボンッ



 肩をつかんで押したらいとも簡単に壁に激突。

 それでも女は俺を見たまま。

 しかしその両目は潤み、水たまりができている。

 ちゃんと顔を見たら、表情筋は強ばって唇はギュッと引き結ばれ顎にはしわがよっていた。

 恐怖に縛られたこの状態で、どうしてこいつは俺をずっと見てられる?


 ナメてんのか、マジで。

 殺せるわけねぇって。


 「どうかなさいましたか!」


 部屋の外で鷹槻の声がして、何も答えてねぇのにドアが開いた。


 「こっ寿様っ! おやめくださいっ」


 鷹槻が割り込んできて、俺と美希を強引に引きはがした。

 美希はへなへなとそこへしゃがみ込む。


 「岡崎様大丈夫ですか? 申し訳ありません」


 平謝りしながら手を掛けて美希をどうにか慰めようとしてる鷹槻は、 

 珍しく取り乱していて、そりゃあもう……



 滑稽だ。

 滑稽で滑稽で、笑えねぇ。




 「ここ俺の部屋なんだよ。その女連れて出てけ」


 ベッドに寝ころんで、俺は鷹槻に言葉を投げた。

 すると、鷹槻は一人でスッと立ち上がり、俺をじっと見つめながら歩いてくる。


 「何だよ?」


 あいつの目が明らかに普通じゃない。

 眉間にしわがより、シャープな面差しがいつになく厳しい。

 立ち止まったかと思うと、唐突に俺の胸ぐらをつかんで引っ張り上げた。