唯夏が俺を捨てて、リーヤ・カーティスに乗り換えたんだと思うのは簡単だった。

 いろんな思惑が渦を巻き、俺を飲み込もうとしてたからだ。

 だがその思考の全てはただの憶測で、唯夏がそうと言ったわけじゃない。

 唯一その事実だけが、俺を支えていた。

 しかし婚約が白紙に戻った。

 こうなると無言の唯夏を信じるよりも、提示されたことを受け入れて、

 憶測こそが真実だったと思うのが正しいことに、嫌でも気づくことになる。





 「美希は一般人だからその夢叶えてやれねぇけど、
 人生かけてぇって思うほど、俺のこと愛してくれてんだよ」





 唯夏とは違って。

 俺はポロロッカフロートを持って歩き出した。



 こんな場所に来るんじゃなかった。





 もう来ねぇ、何があっても。





 歩きながらポロロッカフロートを食器返却口に戻し、
 
 建物の外に出た。

 ふらふらしてたら、また唯夏に会いそうだったから、俺はホテルに戻ることにする。

 居場所を伝えて自家用車に迎えに来て貰うと、てっきり鷹槻が

 出てくるかと思ったのに、ドアを開けてくれたのは違う男だった。