いつ俺が無視した?





 ひたすら連絡取りたくて、逢いたくて、

 ちゃんと話しがしたくて、俺は毎日身を切る思いで過ごしてた。





 「そんなに言うなら信じてやる。
 住所も電話番号もメールアドレスも間違ってて、
 だけど三年間まったく気づかなかった。それで?」


 唯夏は両目いっぱいに涙を溜めて、俺をじっと見つめてる。





 何なんだよ?





 「本当に何も届いてない? 電話したら繋げないって言われたよ。
 メールは登録したアドレスに、ちゃんと送ったよ。住所だって、
 何回も何回も確認したもん。間違ってるはずない」




 「上等だ」




 泣きそうな唯夏の前で、俺は冷たく言い捨てた。


 「戻れないの……? もう、ジュンちゃんの中で、本当に終わっちゃったの?」

 「見てなかったのか? 俺には彼女いるんだよ。美希は俺を絶対不安にさせねぇし、
 どこへも行かねぇ。あいつの夢は俺と結婚することだってさ」


 唯夏の目から溜まった涙がつーっとこぼれ、頬を伝って落ちた。




 『ユイね~っ、オトナになったらジュンちゃんの、およめさんになるよ~』


 言った本人は、多分とっくに忘れてる。


 『パパもママもいいって言ってたしぃ、ジュンちゃんのおじいちゃんも、
 ユイならいいよって言ってくれたぁ。だからヤクソクね?』

 『勝手に決めるな。俺にも選ぶ権利がある』

 『ジュンちゃんユイのことキライなの?』

 『ガキは好きじゃねぇ』


 俺は唯夏より二つ上だから、そんなこと言ってよく逃げてた。

 小学生のときに唯夏がしようとした、勝手な約束。

 しかしそれは婚約という明確なかたちになってあらわれた。



 だが、その決めごとは唯夏の失踪で―――――








 あっという間に白紙に戻ることとなる。