土産物屋をぐるっと回るようにして通過すると、凝ったつくりのレストランがある。

 ガジュマルとか椰子とかマングローブとかが壁を埋め尽くし、

 その間から虎とか猿とか鳥とかが、顔をのぞかせている。

 BGMには小鳥のさえずり、木々のざわめき小川のせせらぎ。

 室内に何匹か設置された獣の前に行くと、センサーでそれらが吠えたりもする。

 テーブルやイスなんかも、その調子で自然に溶け込んでるから、

 まるでジャングルの中にいるような感覚だ。



 俺はポロロッカフロートを注文して、適当な席に座った。

 バニラアイスの上に氷を入れて、コーラをそそぐという、

 いわゆる逆流風コーラフロートだ。

 やり方が変わってるだけで、それはどこにでも売ってる、



 何の変わり映えもない味。



 唯夏はスゲェうまそうに飲んでたけど、やっぱり俺には甘すぎて一口も飲めばたくさんだ。




 買うのは、いつも一つだけだった。


 今日は唯夏がいないから、中身を全部捨てるしかない。

 円筒のプラスチックカップの中で、アマゾン川色した液体が

 ポッカリアイスを浮き上がらせた。






 ガオ―――――ッ






 どこかで獣が吠えて、子どもがキャッキャとはしゃいでいる。

 ピシピシと弾かれる炭酸の音が、人工ジャングルの中で清涼感を醸していた。


 「好きだよ」


 急に上から声が降ってきてハッと顔を上げたら、そこに唯夏が立っていた。


 「ずっとずっと、毎日毎日ジュンちゃんのこと考えてたよ」


 今にも泣きそうな顔で、俺を見つめている。


 「いい加減にしてくれ」


 俺は席を立って唯夏から離れようとした。


 「手紙も電話も、無視したのジュンちゃんじゃん。
 唯はウソなんかついてないよ」