蒸し暑いビニールハウスの中で、南国情緒漂う木々がうっそうと茂っている。

 根本を色鮮やかな花に飾らせ、自分は精一杯枝葉を広げるが、

 葉先でさえもまだ天井にが届かない。

 熱帯植物は生長が早いから、もう育たないよう、先端部に

 細工をしているのかもしれない。

 そのおかげで樹の時が止まっているのだとしたら、



 三年前と今とは何も変わらないということだ。



 ウゼェなぁ。



 こんなとこに来てる俺も、樹見てそんなん考えることも。

 結局、俺も変わってねぇじゃねぇの?

 三年のブランクは頭を冷却するのに役に立ったと思ってたけど、全然違った。

 唯夏が突然俺の前から姿を消したあのときと、同じくらいの怒りが心の中に満ちている。

 あんときと違うのは、不安や心配がないってだけだ。



 ビニールハウスの出口まで来て、俺は何十分かぶりに外に出る。

 天蓋だけがあるアーケードのような道を通って建物の中に入ると、すぐに土産売り場があった。

 椰子の木につぶらな瞳の親子猿がしがみついてる、巨大なぬいぐるみ。

 木も三匹の猿も、等身大スケールじゃねぇかってほど、デケェ。




 まだあるのかよ。




 『あれ欲しいぃっ! 買って買ってぇ!!』

 『あんなもんいらねぇよ』





 実はそのあと一人でここへ戻って来て、店員にいくらか訊いた。

 一点物だから三十五万。

 いくら実家が金持ちだっつったって、十歳だった俺には買えるわけがない。

 それからここへ来るたびに、唯夏はあのぬいぐるみの前で売れないことを祈ってた。