「ごめんなさい」


 私は寿がホテルから外に出る口実をつくって、経路を与えてしまった。


 「いえ、岡崎様に責任はございません」


 優しく微笑む鷹槻さんの顔に罪悪感は少しだけ拭われたけど、やっぱり絶対私のせい。

 あんなところで、よろけたりしなければ、寿は今頃、ペントハウスにいたかもしれない。


 「寿に、何があったんですか?」

 「それは……わたくしの口から申し上げて良いものなのかどうか……」


 すまなそうに紡ぐ鷹槻さんに、深く問うことはできなかった。


 「どうして私を呼んだんですか?」

 「それは帰りの車の中で、お話し致しましょう」


 自分たちのせいだからと、診察料と薬代を払ってくれた鷹槻さんは、

 タクシーでも良かったのに、わざわざリムジンを手配してくれた。

 話しを他の人に聞かれたくなかったのかもしれない。


 「三日前に寿は古い友人と再会したのです。そのときに、
 岡崎様も是非ご一緒にと申していたものですから、わたくしの
 勝手な判断でお呼びしてしまいました」





 私も、一緒に……?





 それって、どういう意味なんだろう。

 寿は一人で、パリまで行ったって言ってたけど、それはさっきの女の子を捜すため?

 だったら、あの子、寿の元カノじゃん。

 再会するときに私を連れて行くって………見せつけるため……


 「どのくらいぶりの再会だったんですか?」

 「三年です」


 さっ三年………


 長いね。

 さっきの寿の態度とか台詞とかを思い出す。

 好きだったんだ、本当にあの女の子のことが。

 そう思った瞬間に、チクッと胸が痛んだ。






 どうしよう、私ホントに―――――