小さく低く、不快を面に思い切り押し出して、寿は言った。

 背後で人が出て行く気配。

 高槻さんは泣きじゃくる女の子を慰めながら……私を見ていた。

 行けってこと?

 こうなることが分かってたから。

 だったら行かなくちゃ!

 そう思ったら勝手に身体が動いてて、私は部屋の外に飛び出した。

 エレベーターが閉まっていくのが見える。

 走ってみたけど、全然ダメで、最上階まで来てくれるエレベーターは一台で。

 隣りの非常口のランプがついた白い鉄の扉を開けて、下の階までダッシュ。

 あっ、ここにもエレベーターないっ。



 も~~~~~~~~~っ!



 どこからあるのぉっ!!




 叫びたくなったけど、その勢いを馬力に変えて私はガンガン階段を下る。

 下っていたら、ゆっくり歩く人影が見えた。


 「すみません!」


 ビクッと身体をそびやかせて、その人は私を見上…………


 「こっ寿!!」


 私が気づいた瞬間、向こうも剛速で階段を駆け下り始める。


 「待て~~~っ!」


 手すりに触りながら階段を何階も何階も……

 息切れして速度も落ちてくる。

 寿だってきっとそのはず。

 いい加減、足が限か……


 「痛っ!!」


 足グリッと捻って、よろける私。

 迫ってくる階段、倒れる身体。




 マズイ、ヤバイどうしよう!!



 夢中で手すりをつかむけど、落下しようとする勢いは殺せない。