「鷹槻さんですか? 岡崎美希ですけど、今そっちに向かってます」

 「本当ですか! ありがとうございます。話しを通しておくので、着いたらフロントに行ってください」


 言われた通りフロントに行くと、ベルボーイが最上階まで連れて行ってくれた。

 エレベーターのドアの前で待っててくれた鷹槻さんは、すごく難しい顔。


 「今から見聞きしたことは、他言無用に願います」

 「分かりました」




 ペントハウスの扉が開く――――――




 「どうでも良かったんだろっ!!」


 唐突に響く寿の怒声。

 華奢な少女を前に、寿は取り乱していた。


 「違うもん!」

 「テメェが夢に現を抜かしてる間、俺はパリまで行った。
 一ヶ月近く一人で彷徨い歩いて、どんな気持ちだったと思う?」

 「だから」


 あっ!

 そう思った瞬間に高槻さんが動く。



 「テメェに、だからなんつー資格ねぇ!」


 寿は手近にあった壺を手に取って、投げつける。


 「やめてください!」


 ボンッと鈍い音がしたあと、床に落ち、もの凄い音を立てて壺が砕けた。


 「帰れよ!」

 「ちゃんと話ししよう?」

 「喋ることなんかねぇんだよ!! これ以上いたらぶっ殺すぞ!」


 どうしよう、私、何すればいいの?


 「神野様、今日のところはこれで、お引き取りください」

 「嫌だよ……ジュンちゃん………お願い……話し聞いて?」

 「都合のいいことばっか言いやがって、何様だ? 神野様か。テメェの顔なんか死んでも見たくねぇ」


 唾棄して寿は、出口の方を、私の方を見た。

 一瞬、空気が固まる。

 ビックリしたような顔をしたのも束の間、寿はもの凄く険しい顔をして、ドスドス歩いてくる。

 どうしよう。


 「あのコトブ」

 「ウゼェよ……」