応接室の襖の前で、鷹槻心貢は俺を心配そうな表情で見つめてる。

 そんな顔すんだったら、行かせてくれれば良かっただろ!!

 怒鳴りてぇのに息をするので精一杯だ。


 「衣直しがありますので、あちらの部屋にお連れしてください」


 さっき鷹槻を恫喝して出たばかりの部屋の中には、唯夏が持ってきた

 ベージュの紙袋が置かれていた。


 「寿様、今日だけは……今日だけはご辛抱ください……」


 巨漢から畳の上に降ろされてすぐ、出て行こうとした俺の腕を、鷹槻はつかんだ。


 「言っただろう? 今日は後継者として来たわけじゃねぇ」

 「お願いです寿様」

 「どんなに頼まれても、もうあの女には会わねぇ!!」


 鷹槻の腕を振り払って、俺は部屋の襖を開けた。

 瞬間、真っ白なワンピースを着た女が目に飛び込んでくる。

 この城ん中に、外国の格好してる奴なんて、俺らと、客しかいねぇ……


 「ジュンちゃん……」


 ガキみてぇに高くて細い声が鼓膜に届く。


 「今ちょうどご挨拶に伺うところでした。僕にはこのあと、
 会合がございますので、申し訳ありませんが、失礼させていただきます」


 微笑みを浮かべながら唯夏から目をそらした。


 「会合って……誰と?」

 「つまらない寄り合いですよ」


 唯夏の横をすり抜けようとしたら、冷たい手が俺の手をつかむ。


 「だったら、もっと話そうよ!」


 調子いいこと言ってんじゃねぇ!

 怒鳴りたい。

 でもピキピキと、棺にひびの入る音がしたから、ゆっくりと息を吐いて、怒りを外に逃がした。


 「もう、さっき話したじゃないですか」

 「あんなことじゃなくって、もっともっと……唯、ジュンちゃんに逢いたかったんだよ」


 逢いたかった?