「これは……寿様に」

 「黙れ!」


 鷹槻は戸惑ったような顔をして、紙袋を持ったまま立っている。


 「帰る。車を回せ」

 「いけません」

 「もう充分だろ!」


 これ以上あそこにいて、何になる?


 「ギリギリなんだよ!! お前責任取れんのかっ」


 怒鳴ったら鷹槻は眉をひそめ、視線を下げた。


 「俺は戻らねぇからな」


 鷹槻一人を部屋に残し、俺はそこから出ると、廊下を来たのとは反対方向に進む。

 その辺にいたメイドに頼んで運転手に電話をかけるように頼み、

 俺は屋敷の外に出……ようとした。


 「どけよ」


 うすっぺらな男性用着物を来た巨漢が入り口の前に立ちはだかって、

 俺が近づいてもどこうとしない。


 「聞こえねぇのか!?」

 「お戻り下さい」

 「ふざけるな」


 強引に行こうとしたら腕をつかまれた。


 「イテェな! 放せよ」

 「お戻り下さい寿様」

 「ヤダっつってんだろ!!」


 蹴りを入れたが巨漢はビクともしないばかりか腕をつかむ力が増す。


 「イテェんだよ!!」


 パンチとキックを繰り出しまくって暴れようとしたが、

 近くにいた警備員も集まってきて、あっという間に取り押さえられた。


 「やめろ! 降ろせっ!!」


 ひょいっと担ぎ上げられて、屋敷の奥へ奥へと連れて行かれる。


 「俺は帰る!! 降ろ……」




 息が……できねぇ……




 「寿様、少々お静かに願います」


 巨漢の低音が重く響いた。