「来年の四月、私立高校への入学が決まったぞ~ぉ」


 理解不能な言葉に俺は絶句。

 母国はアメリカだが母語は日本語で、思考するのも日本語だ。

 でも、理解ができなかった。

 だって俺は今、大学の卒業証書を見せたばかりだ。


 「お前はまだ若すぎる。社会に出る前に祖国日本の文化と一般の生活を知った方がいい」


 やっと難解な発言の意味を解して冷静さを取り戻す俺。


 「十九で大学まで出たことは賞賛に値する。だからこそだ。でかい男になるために、日本へ行って来い」


 会社の実権握ってるはずの親父だが、ジジイには頭が上がらない。

 けど、今回はスゲェ乗り気っぽい。


 「人の上に立つようになったとき、己の下で働くやつらの青春も分からないでどうする!!」


 と親父は熱っぽくもっともらしいことを語る。


 「ねぇ、お父さん、あのときは大変でしたよね」

 「そうだったなぁ。今となってはいい思い出だが、当時は……」


 そんで二人の男は身の上話に梯子をかけて、親子揃って延々二十分。

 ウゼー。 


 「つまりだ、敵を知るにはまず味方から」

 「これっ! 味方ではなく、己から、だ。お前も高校生からやり直すかバカモノ」


 マジつまんねぇ漫才とかやりだすし。

 ついてけねぇ。


 「今日はこのあとプロムがあるので、失礼致します」


 俺は部屋を出た。

 出たんだよ、何も言わずに。