「遊びに行かない?」

 「人混みは嫌なんだって言っただろ!」


 分かるか? だから俺は今も不快なんだ。

 取り巻いてる総勢十人そこらの女が、俺を教祖様のように崇め奉ってるようなこの状況。

 玉の輿が相当魅力らしい。



 ジジイのせいだ。



 都心の金持ちばっかいるような学校に入れてくれりゃ良かったのに。

 GWになると、俺は予定通りペントハウスでダラダラしてた。

 このまんま無駄な時間がどんどん流れて黄金週間が終わるだろう。

 と思ってた、矢先の出来事だった。




 GW最後の一日にコンコンと部屋をノックして、鷹槻が入ってきた。


 「出かけるんじゃなかったのか?」

 「会長からお電話が入りましたので」


 会長会長って、お前マジでジジイの犬だな。

 今更ながらにジジイが鷹槻を俺につけた理由を痛感。


 「出ねぇよ」

 「いえ。出ていただきます!」


 あのジジイのことになると、鷹槻はマジ真剣になる。

 デキてんじゃね? とかたまに疑ったりする。





 『心貢……ワシはお前がいなくては、生きていけんのだよ……』


 ハゲがしわくちゃな手で、鷹槻の整った顔に触れる。


 『光栄です会長』


 鷹槻は上目遣いになりながら、いつもの非対称な笑みとは違う、はにかみ笑顔を浮かべながら言う。


 『二人でいるときくらいは、名前で呼んでくれ』


 あ~っ止まれ妄想!!


 『そっそんな……』


 悩ましげな目で艶めかしくため息なんかつく鷹槻。






 「鷹槻ッ!! そんな風に喋ってんじゃね~~~!!」

 「そっそんな風とおっしゃられても……どこか変ですか?」


 ヤベェ! 妄想にマジで怒鳴っちまった。


 「いっいや、こっちの話しだ」


 鷹槻が相当訝しそうな顔をして、俺を見始めた。

 俺が意味不明なことをわめいて攪乱しようとしたと、鷹槻は解釈したかもしれない。

 まぁ、それくらいならいい。