新山奈々は料理が得意らしい。

 今日から早速弁当をつくってきてくれた。

 なかなか食える味だが、やっぱ飽きる。


 「ごちそうさま。マジうまかったよ」


 大分残ってる弁当を見て、新山はちょっと悲しそうな顔をした。


 「食いきれなくて悪いな。けど基本、俺は食うの好きじゃねぇから、普段から小食なんだ」

 「そうなんだ。覚えとくね」


 安心したような、でもまだ不安みてぇな曖昧な表情で笑う新山。

 苦手だなぁ、こういうの。


 「春巻き最高だった」

 「良かった。この会社、私も好きなの」

 「何の会社?」

 「冷凍食品なんだ、この春巻き」

 「冷凍食品?」


 ヤ~ベェ、しくった。

 冷凍食品なんか存在してることしか知らねぇよ。


 「自分でつくったのは?」

 「ポテトサラダと、唐揚げと卵焼きと……」

 「かなりいろいろできんのな。高校卒業したら面接来い。専属のシェフにしてやるよ」


 やっと新山が嬉しそうに笑ったから、そこでリップサービスは終了。

 普通だったら女が暗い顔してたって別に何も思わねぇけど、新山がそうだと、何だか胸くそ悪い。

 こんな感じの関係になってから新山は、俺がいないとエライ目に遭うらしかった。

 ちょっと目ぇ離すと誰かどうかあいつの近くにいて、質問攻めとかに遭っている。


 「テメェら奈々を困らしてんじゃねぇよ。何かあるんだったら俺を通せ」


 って言うと目を輝かせてぞわ~って集まって来るから、


 「俺を通せ」


 じゃなくて


 「直接俺に言え」


 って言った方が正しい。




 「寿くんGWどうするのぉ?」

 「GW? さぁな。決めてねぇ」

 「旅行とか行かないの?」

 「あんな時期に行ったって混んでるだけだし、ダリィ」


 どうせLA帰るか、ペントハウスでだらけて終わる。

 実家帰ったってやることねぇもんなぁ、後者の方が有力だ。