「俺……勘違いしてたらしいな」


 星哉が照れくさそうに笑う。


 「昨日、彩並の車に乗ってどこかに行ったっていうの、聞いたからさ……」


 ドキリと心臓が強く鼓動する。


 「新山のためだったんだよな?」


 星哉は私が寿と用があるからデート断ったと思ってたんだ。


 「うん、そう……」

 「ごめん。俺カッコワリィな」

 「嬉しい」


 星哉は優しい。

 ずっとずっと一途に想ってきた人。

 理想も現実もイコールだけど、飽きるわけないじゃん。


 「今日、部活休むから放課後どっか出かけよう」

 「ホントッ?」


 放課後デートでプリクラ撮って、例のクレープ屋さん行って、夕ご飯食べて。

 やっぱり星哉のこと、好きなんだって実感した。


 「久しぶりだしさ、中学校行ってみない?」


 電車に揺られてたら、急に星哉は微笑みながら言った。


 「もう閉まってるんじゃない?」

 「九時頃まで開いてる」


 何故か星哉の語気が強まった。

 私にとって中学校は葬りたいことしかない、暗黒の場所。

 そのすべてを、星哉と一緒に行ったってだけで消せる?

 時間が掛かっても、いい思い出に変えられる?


 「岡崎」


 ハッとして振り返ると、電車が止まっていた。


 「手」


 星哉の手がスッと私の前に差し出される。

 ガチガチに緊張してかたい手を持ち上げると、星哉は私のそれを迎えに来てくれた。

 指が―――絡む。