寿と別れたあと、私は落ち着かなかった。

 人質っていう言葉が、ものすごく気になる。

 奈々には電話したけど、ケータイの電源切ってるみたいで連絡が取れないし。

 私を送ったあと、寿は奈々のところに行ったのかもしれない。

 変なことされてないかなぁ。

 心配してケータイを肌身離さずもって、三十分に一回くらいの割合で

 電話してたら、奈々からかかってきた。


 「奈々っ、大丈夫っ?」


 出るなり言ったら、奈々の嗚咽が聞こえてきて、私の心配度マックス!


 「どうしたのっ!? 今から行こうかっ?」 

 「ミッキー……ありがとう……」


 あり……がとう?


 「今までね、寿クンといたの。彼女にしてくれるって
 ……ウチのこと、好きなんだって……」


 こっ寿……あんたいったい、何考えてるの?

 奈々のこと、特別だとは言ってたけど、好きだなんて言ってなかったじゃん。


 「ミッキーのおかげだよ……」

 「そっそんなことない」
 

 私、寿に告られたって言ったのに、

 あいつどうやって奈々を説得したんだろう。

 それとも、奈々はそれを承知で……?


 「ありがとね。すごい嬉しい」


 涙ながらにお礼を言われて、良心がズキズキ痛んで、だけど私にはどうしようもなかった。

 寿は奈々のことをどうするつもりなんだろう。

 ちゃんと、本当に彼女として扱ってくれるのかな。

 心配で不安で、たまらなかった。